こんにちは。メンタルナースのりんご@nsringo55です。
3月11日は東日本大震災の被災の日です。2011年3月11日から11年経過しました。
私はその日は東京の大学病院で勤務しており、夜勤明けでした。東京でも地震は時々ありますが、明らかにいつもより大きく揺れ、外を見ると、周りのビルから人が出て来たので、私もあわてて外に飛び出しました。
夜は帰宅困難者で道路は歩く人でふさがれていました。コンビニには、食べ物がなくなり、一時的に紙類がなくなってしまったこともありました。連日、震災映像が流れ、人々は先の見えない不安、心配、恐怖でいっぱいでした。
勤務中も余震が続きました。家にいる時も、いつでも避難できるように服のまま眠る日々でした。
日本は自然災害のご存じの通り災害の多い国です。
災害が起こったと直後は、生きること、身を守ることに必死です。
その間、心も大きく傷ついています。
現在もウクライナでは悲しいことが起こっています。
生きること、身を守ること、生活を立て直すこと。そして心のケアが必要になります。
今日は、災害時の心のケアについてお伝えします。
災害時の心のケアを知りたい
災害時における心理的反応
災害に遭遇すると大きな心理的負担がかかります。
それは「異常なできごとに対する正常な反応」です。
大きなショック、悲しみ、苦しみを感じることは、正常な反応です。
災害の体験、災害による被害、災害の目撃など
反応 意欲の喪失、抑うつ、不安、不眠、食欲低下、不注意による事故などが生じやすくなる
死別、行方不明、負傷、家財の喪失などによる悲嘆がみられる。
これにより、現実的、妥当な判断力が麻痺する。
「自分だけが生き残った」「適切な対応ができなかった」という罪責感が生まれることをサイバーズギルドといいます(生存者の罪責)。
反応 麻痺、喪失感、強い自責、周囲への憤り、怒り
生きていて申し訳ない…という自分を責める気持ちをサイバーズギルドといいます。
新しい生活環境がストレス
反応 心身の不調、不定愁訴、不眠、いらだちが増加
災害時の時間経過
災害が起こった直後は、個人ごとに様々な症状が見られます。
多くは一過性なものもあるので、厳密な精神医学的診断を下す意義は乏しいと言われています。回復過程で2次被害が生じすこともあります。
災害被害の詳細がわからないため、現実的な不安が先に来る。我慢して耐えていることが多く、他人にわかる症状として出にくい。
【対応】具体的に何を必要としているかを確認
強い不安で落ち着きがなくなる。話し方や行動にまとまりがなくなる。動機、息切れ、発汗、興奮、急に泣くなど感情的な乱れが生じることもある。
【対応】安静、安眠の確保
一見すると思考や感情が麻痺、停止したような状態。発語、行動が減り、質問に答えず、目の前のことが手につかない。現実感が失われたり、言葉が出ない。
【対応】表面上、そう見えなくても強い悲しみや恐怖を抱いていることがあるため、反応がない場合や落ち着きすぎている場合は注意が必要。
少しずつ平常を取り戻します。
しかし、特に心理的負担の大きかった被災者は回復が遅れ、症状が慢性化しPTSDをはじめとする心理的不調が長引くことがあります。
【被災へ派遣精神医療チーム(DPAT…Disaster Psychiatric Assistant Team)、心のケアチームを派遣。】
チーム…精神科医、看護師、業務調整委員、児童精神科医、薬剤師、保健師、精神保健福祉士、臨床心理士など
サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)
災害発生後早期(直後から4週間程度)に推奨される心理支援をPFA(心理的応急処置)と言います。
※治療を目的とした介入を指すものではなく、重大な危機的出来事に直面したばかりで苦しんでいる被災者への対応心を指します。
WHO版のPFAは、災害・紛争・犯罪などに巻き込まれた人々を心理的に保護し、これ以上の心理的被害を防ぎ、様々な援助のためのコミュニケーションを促進することを目的としており、現実的な状況を踏まえた連携を取ることが重視されています。この手法を使う人として、医療関係者だけではなく、防災、教育、治安、行政、産業などに従事する方や、NGO・NPOやボランティア関係者が想定されています。
日本心理臨床学会より引用
心的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド:PFA HWO版)PDF
PEAの活動内容
PEAの8つの活動内容(米国版)
1・被災者に近づき、活動を始める
2・安全と安心感
3・安定化
4・情報を集め、今必要なこと、困っていることを把握する
5・現実的な問題解決を助ける
6・周囲の人々とのかかわりを促進する
7・対処に役立つ情報
8・紹介と引き継ぎ
「サイコロジカル・ファーストエイド実施の手引き 第2版(日本)」
PFAの活動原則
WHO版のPEAの基本活動原則
援助活動を開始する前に周囲を「見る」ことが重要
- 安全の確認
- 明らかに急を要する生きていく上での基本的ニーズのある人の確認
- 深刻なストレス反応を示す人の確認
相手の話を聞くことには、状況やニーズを理解し、適せに名援助を行うために重要
- 支援が必要と思われる人たちに寄り添う
- 必要なものや気がかりなことについて尋ねる
- 耳を傾け、気持ちを落ち着かせる手助けをする
被災者を実際に役立つ支援につなぐことが重要
- 生きていく上での基本的なニーズが満たされ、サービスが受けられるように手助けする
- 自分で問題に対処できるよう手助けする
- 情報を提供する
- 大切な人や社会支援を結びつける
※災害時の危機の際にリスクが高く、特別な注意を必要とする可能性の高い人もいます。
子供、健康上の問題がある人、障害がある人、差別や暴力を受ける恐れのある人
もっと詳しく知りたい方は…
PEAを提供する人のケア
PEAを提供する支援者も被災者とは異なる形のストレスが生じています。
ケアを提供する方も傷ついています。
- 自分自身の健康の問題は自覚しにくい
- 自覚していても、使命感によって、休息や治療を後回しにする傾向がある
- 支援者自身のストレスを軽減し、疲労を最小限に防ぐことが必要
支援者のストレス要因
- 急性期における業務形態が慢性化することによる疲労
- 使命感と現実の制約との間で生じる葛藤
- 被災者から向けられる怒りなどの感情
- 被災現場の目撃によるトラウマ反応
- 急性ストレス障害(ASD)
- 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
- 適応障害
- 恐怖症
これらを防ぐためには…
- 業務のローテーションと役割分担の明確化
- 援助者のストレスについての教育
- 心身のチェックと相談体制の整備
- 住民の心理的反応についての教育
- 被災現場のシミュレーション
まとめ
災害は人の心を大きく傷つけます。
どんなに、科学や技術が発展して援助の形を変えていっても、根本的なところで、心をケアするのは人です。
私が勤務していた病院でもDPADを編成し、被災地へ派遣しました。
その後、私が勤務していた病院にも東日本大震災後の心のケアが必要な方が何名か入院されました。
心のケアは、現実的な問題解決後に少し遅れて、必要になってきます。
年月を経るごとにどうしても報道は減りますが、現在も苦しみ、悲しみを抱えて生きている方もいます。
自分が被害者になるかもしれないし、援助する側になるかもしれません。
被災者の心はどのようなプロセスをたどり、ケアする側はどんなことに注意して関わるかということを理解していただけたらと思います。
コメント
コメント一覧 (2件)
こんばんは、KENです。
災害時における心のケアが分かりやすく解説されていました。
私も精神看護に携わっているので、参考になりました。
これからも頑張ってください!
KEN様
嬉しいコメントありがとうございます。
精神科看護に携わっていらっしゃるということで、親近感です。
これからも、少しでも参考にしていただけるような記事を増やしていきたいです。
励ましのお言葉もありがとうございます!
りんご