【ニュース】旧大口病院点滴連続中毒死事件

ナースの部屋

こんにちは。ナースりんご@nsringogo55です。

横浜市の大口病院で点滴に消毒液を混ぜて3人の入院患者を殺害したとして、殺人罪などの罪に問われた元看護士、久保木愛弓(34)の裁判員裁判が2021年10月1日から始まりました。

この事件は、よく覚えている事件です。

当時は、消毒薬で3人もの人を殺した事実について、「なんでそんなことを……」と大きなショックを受けました。

旧大口病院の点滴連続中毒死事件 起訴状によると、久保木被告は2016年9月15~19日ごろ、いずれも入院患者の興津朝江さん=当時(78)=と西川惣蔵さん=同(88)、八巻信雄さん=同(88)=の点滴に消毒液を混入して同16~20日ごろに殺害し、さらに殺害目的で同18~19日ごろ、点滴袋5個に消毒液を入れたとされる。

東京新聞webより

東京新聞webで見た記事ですが、裁判官とのやり取りも細かく書かれており、被告や両親、同僚などの証言もあり、興味深く読みました。

この記事をもとに、思ったことや考えたことをまとめておこうと思います。

1・久保木被告が看護師になろうと思ったきっかけ

 父の証言によると、久保木愛弓被告は、大人しく不器用なところがあった。父は、放任主義な傾向があり、母はやや過干渉な部分もあったかもしれないが、関係性は悪くなかったとのこと。高校生の頃に、進路を考えた時に、氷河期であったこの時代、看護師は人の役に立てること、手に職を持てて、働き先も困らない、収入もよい、久保木被告の性格が、コツコツと努力家なので、いいのでは?と勧められ、看護師を目指したのだという。

 久保木被告も、「信頼される看護師になりたい」と思っていたという。

 

2・迷いながら看護師に

 実習は一つ落としており、看護師に向かないと思ったこともあるようであるが、両親に学費を出してもらっていたこと、病院から奨学金(6万円)を借りていたこともあり、看護学校を卒業し、病院に奨学金を返済もあり看護師を続けることにした。

 はじめはリハビリ病棟で3年勤務し、奨学金の返済も終わったという。

3・精神的につらかった

  2011年から障がい者の病棟に移り、急変で亡くなることも多い病棟に。

ルート確保がうまくいかず、家族に責められることもあったという。

看護師の仕事に不安を感じ、不調に相談するも、「資格を持っているから」と引きとめられたとのこと。

その後、老人保健施設に移動。患者が死亡する機関に立ち会い、「精神的につらくなった」と、不安を感じるようになり2014年4月から精神科に通院。抑うつで同年7月まで休職。

4・復帰しても不安

8月から復帰し、同系列の診療所でないか勤務に当たる。はじめはつづけられると考えていたが、休日や夜間に患者や患者の家族から相談を受けるオンコールが不安だったという。

このことで、7年間勤務した病院を退職した。

退職後も精神科には薬をもらうために通院していたが、主治医が変わり、方針が合わなくなって通院をやめた。

5・大口病院へ転職

 退職後、自分の学歴や能力では一般企業には就職できないと思い、看護師を続けることに。退職後の翌月に大口病院へ転職した。大口病院を選んだのは、ほとんど延命措置が行われないため、自分が延命措置をしなくてもいいと思ったからだという。しかし、実際に仕事を始めると終末期医療にストレスを感じていた。

 夜勤は月8~10回。師長には辛いことを相談せず、他の人にも相談しなかった。

患者の家族に「看護師に殺された」と怒られたこともあった

家族に状況を説明したり、話すことが辛く、「怖い」と感じていた

 2016年5~6月ころから、体調不良、不眠、意欲低下、過食などがあった。

相談はできず、スタッフからは「仕事ができない」「悪口を言われている」と思っていた。

6・消毒薬混入

1・1件目の殺害

 ニュースで消毒薬を打ってなくなることは知っていたという。

2016年9月、最初に殺害されたとされる興津朝江さん(当時78歳)の点滴袋にヂアミトールを混入したことについては、この患者さんが、梅干しを買いに売店に行っていたところを、久保木被告が迎えに行くとうことがあった。「離院やけがをされれば責められる」と思い、自分の次の勤務までに退院してほしくてやってしまったと述べた。

 興津さんが亡くなり、「本当に申し訳ないが、ほっとした」と述べた。

2・2件目の殺害

西川惣蔵さん(当時88歳)については、夜勤で出勤した際、興津さんが亡くなったのを知った。西川さんは、その時、大部屋から個室に移されており、状態がよくないことを知り、自分の勤務中に亡くなるのではと不安になったという。

 興津さんには、点滴にジアミトールを混入したが、西川さんにはルートの側管からワンショットしたのだという。西川さんは2時間後に亡くなった。

3・3件目の殺害

 3件目の八巻さんの殺害については、弁護人の「どうして入れようと思ったのか?」の問いに「わかりません」と答えており、八巻さんの病状、家族は把握しないまま、ナースステーションにあった段ボールの中の点滴に10個、ジアミトールを詰めたとのことだった。

 つまり、これまでの被告は、「急変時に家族の説明に責められたくない」ことを理由に上げてきたが、消毒薬が混入された点滴がいつ投与されるかも把握されないままであることを、もともとの動機と会っていないないことをどう説明するかと問われ、「自分でもわかりません」と答えた。

このあたりの証言には、「わかりません」「覚えていません」との返答が多い

7・発覚

 八巻さんに投与された点滴が異様に泡立っているのを同僚看護師が見つけ、異物混入が発覚する。

このことで警察の捜査が入り、「悪いことと痛感した」という。しかし、その時点では名乗り出る勇気はなかったとも述べる。

8・トラブル・問題行動

 これらの事件の少し前に、①看護師のエプロンが切られている②カルテが破られている③印鑑が壊されている④ポーチに針が刺さっている⑤ペットボトルに異物混入というトラブルがあった。

これに対しては、①~④までは自分がしたとみとめたが、⑤は否定した。

これらを「なぜ、やったのか?」に対しては「わかりません」と答えている。

9・自殺未遂

 この事件後、久保木被告は、睡眠薬の過剰摂取、ロープで首つり、インスリン(病棟から持ち去る)の大量注射をしている。

10・その後

 11月末に大口病院を退職後、他の病院で一時期働くが、「看護師の仕事をしていいとは思わなかった」と退職。その後は日雇いの仕事で、商品を棚から持ってくる「ピッキング」の仕事をした。

 いつか逮捕されるという思いはあり、「身勝手な理由で人を殺めてしまった私が、人の命を守る看護師をしていいとは思いませんでした」と語った。

亡くなった3人に対して

「興津さんは退院できたと思うし、西川さんも八巻さんも安らかに最期を迎えられたのに私のせいで苦しい思いをさせてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいです」と述べた。

家族に対して

「私の身勝手な理由で大切なご家族の命を奪ってしまい、大変申し訳ありませんでした」と頭を下げた。

家族への賠償金も、600万円(自分の貯金+家族が久保木被告の結婚資金の準備していた300万円)をそれぞれの遺族に200万円準備したという。

11・人物像

 高校生時代、音に過敏でイヤフォンを付けて生活。子供のころは、小・中は、親しい友人もいたが、高校生の時は、親友と呼べるほど親しい友人がいなかった。

 悩みが相談できず、自分の中にため込むタイプ。発散することができない。自分の性格を内向的だと話した。

 ものに当たることは時々あった様子。寮の壁をけって穴をあけたこともある。

12・最後に

 最近、読んだヴァイタル・サイン/南京子さんの本の中でも、大口病院の事や、モデルと思われる内容も出てきます。

  私も、勤務の過酷さ、精神的にも肉体的にも辛い勤務、プレッシャーはよくわかります。ターミナルケアのしんどさも理解できます。しかし、人の命を奪っていいことにはなりませんし、この被告が最後には正気に戻ったと事件を告白し、家族、故人に謝罪する気持ちも持てたことは、大切なことだと感じました。

 殺人は重罪ですし、あってはならないこと。たくさんの事を奪います。心も人生も。この被告も一生このことを謝罪し、後悔していくことになるでしょう。

 看護師として、心理師として、医療者として、一人の人として、非常につらく悲しい事件です。

 もともとの性格傾向、気質、環境など複合的に絡み合い、精神を病み、追いつめられていった経過も感じました。事実はわかりませんが、悪口を言われていると感じていたり、問題行動もあります。幻聴や不可解な行動もあったようです。不安定な精神状態を感じさせます。記憶があいまいだったり、つじつまの合わない返答もあり、乖離(?)のような現実感がないような状態も感じさせます。

   この看護師の事件を通して、感じるのは、精神のもろさ、孤独、悩み、自分や大切なことを見失う事、命の尊厳、そして、看護師の仕事、命に向き合う仕事とは?ということです。

 最後に亡くなられた方、遺族の方の気持ちを思うと、こんな事件が二度とないように、と心から思います。

 そして、医療で働く医療者・看護師も追いつめられませんように……とも思ってしまいます。

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